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​一発に泣いた晩秋

Episode 10

 平素より慶早戦支援委員会のWebサイトをご利用いただき、ありがとうございます。

 

 前回のEpisode9では、3連覇に大きく近づいたシーズンについてご紹介しました。

 

 今回のEpisode10では、2020年秋季リーグ、コロナ禍で行われた慶早戦についてご紹介します。観客数を制限した上での開催、注目選手の多さから例年以上に注目された秋季リーグ戦、結末はあまりに劇的なものとなったのでした。

 

 この年、秋季リーグ戦期間中に行われたドラフト会議では、四大学(慶早法明)のエースが1位指名され(史上初!)、投手戦も非常に多くなっていました。特に慶早戦では、塾野球部擁する木澤投手(現 東京ヤクルトスワローズ)と早大・早川投手(現 東北楽天ゴールデンイーグルス)の投げ合いに注目が集まっただけではなく、優勝を決める一騎打ちという状況だったため各メディア、他校選手までも勝敗の行方を固唾を飲んで見守る一戦となりました。

 

 塾野球部はどちらかで勝てば優勝、早大は負けられないという慶應にとっては有利な状況で初戦を迎えることとなりましたが、幾度も慶大打線を苦しめた早川投手が立ちはだかります。多彩な変化球、制球力を武器とする早川投手を前に、慶大打線のバットは空を切りました。しかし木澤投手も負けてはいません。投球ごとに気合のこもった声が漏れる木澤投手、速球を中心に5回まで無失点に抑え、テンポの良い投手戦となります。しかし1対1で迎えた7回裏、早大2年 蛭間選手にレフトスタンドまで運ばれることとなり、リードを許します。早川投手を前に15三振、第2戦に勝利を賭けることとなりました。

 

 負けられない第2戦、両監督とも早めの継投策に舵を切ります。打っては主将 瀬戸西選手(現  ENEOS)の一打などで2点を挙げ、9回表を前に2-1とリードします。ここで慶大・堀井監督は前日登板のエース木澤投手をマウンドに送ります。2死後、ヒットで出塁を許し、迎えるは昨日HRを許している蛭間選手。昨日の借りを返すことになるかと思われますが、堀井監督は交代を決断します。これまでのリーグ戦で安定感のあった2年生サウスポー、生井投手でした。後のインタビューでも木澤投手も語っていましたが、チーム全体で信頼していた生井投手。しかしその初球、蛭間選手のバットから放たれた打球は見事な曲線を描き、バックスクリーンに。二日連続の劇的なHR、あの瞬間、時が止まったかのように感じました。呆然とする塾野球部、一方で蛭間選手もこみ上げるものがあったのでしょう、ベンチに戻る際には目を潤ませていました。

 

 裏の攻撃は早川投手に抑えられ、早大は10シーズンぶりの優勝を無敗で達成するという偉業を成し遂げます。主将でありエースでもあった早川投手を中心に、総合力で勝った早大が賜杯を手にしたのでした。

 

 多くの注目と強いプレッシャーの中で繰り広げられた戦い、2020年秋季リーグ戦は若きスラッガーの一発で幕を閉じたのでした。

 

​ 試合の流れを大きく左右し、時には勝敗を決定づけることもあるHR。一振りでゲームの主役となり、その人生を大きく変えることもあるでしょう。六大学のHR記録について今後ご紹介します!

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